こんにちは
マナビツナグヒトのみこりんです。
自分の節目節目に様々な出会いがあります。
この本もその一つです。
「働きながら社会を変える〜ビジネスパーソン『子どもの貧困』に挑む〜」
by慎泰俊 (英治出版)
読み終わった瞬間に、いても立ってもいられない気持ちになる本でした。
本書が出たのは2011年11月です。
一時期、DV被害者の支援をする人向けの研修を企画していたことから、
子どもの虐待という実態に触れました。
子どもが子どもらしく生きられないことに憤りを、
それを知りつつ何もできないことに虚しさを、感じたものです。
その後、学校現場に戻りましたが、
子どもが育つ背景に家庭の問題が影響を及ぼしていることを実感し、
一教師として改めてこの問題について考えていた頃、
この本の存在を知りました。
6年余りたった昨日、もう一度読み返し、「社会を変える」について考えました。
児童養護施設とはどういう施設か?
一言で言うと、
「主に、虐待などの理由で親から離された子ども達が生活する施設」です。
(厚生労働省の資料によると、約10年前から現在にかけて、『虐待』のためという理由が圧倒的に増えている)
ほとんどの施設は社会福祉法人によって運営されている民営組織で、
国や地方自治体からの措置費という予算と寄付で運営されています。
厚生労働省は、施設運営のために最低基準を定めており、
措置費はこれらを満たすための費用として使われています(と言っても十分な額とは言い難い)。
そしてこれは、憲法25条の
「最低限度の生活」を営む上での国の義務であるというところに依拠しているそうです。
施設には配置基準により様々な職員、施設長や児童指導員、保育士、栄養士などが配置されているそうです(といっても十分な数とは言えない)。
加えて、専門職員の職員、特別指導加算職員、自立支援指導員、心理療法担当職員などの加配もあり、様々な背景を持った子ども達を
支える人的支援をめざしているそうです。
ここで働く職員の日常はとてもハードです。
子ども達は、この施設で家庭での養育の代わりに、施設の職員からの養育を受け成長していきます。
職員の仕事の様子や子ども達の生活の様子など、
著者が住み込みから見聞きした事柄が、詳細に記録されており、
児童養護施やその職員、入所している子ども達が抱える困難な課題が
浮かび上がってきます。
とはいえ、決して暗いだけではなく希望も見えるところが救いです。
社会が変わらないのはなぜか?
本書を読むにつけ、なぜ、罪のない子ども達がこのような苦労を背負わなければいけないのか?
ということを思います。
これらの問題がなかなか解決しないのはなぜなのでしょう。
著者の記述からは2つの理由が考えられます。
1つは、お金の問題です。
日本はOECD諸国の比較において、
子ども向け支出が最も低い国と言う位置づけになっています。
国から出る予算がそもそも少なく、現実にかかるお金が足りないことから、
施設の環境や子ども達の支援をすることが難しいのです。
じゃあ、予算を増やせば・・・と言っても、
それを決めるのは子どもではありません。
子ども達には選挙権もないし、自分たちの権利を多くの人に伝える術もないのです。
だから、子どもの問題は解決が難しいと言えるのだと思います。
もう1点、これは私も普段から感じていることです。
子どもの虐待という実態を知っている人と知らない人の認識の差が大きいということです。
以前、保育園の待機児童について大きく取り上げられたことがありました。
あれは、同じような境遇にあった方、その体験に共感できる方が多く、
その方達の声が後押しをしたと私は感じています。
しかし、子ども達は自分の境遇について声を上げる術がないのです。
そして、同じような体験をした子ども達は、
自分のことをあまり語りたがりません。
虐待と言う大きな問題を、世間一般の方々の認識へ近づけることが
解決には必要なのではないかと思います。
社会をよくしたいという気持ちがある人にできることは何か?
著者は、仲間と一緒に Living In Peace というNPO団体を起ち上げます。
この団体のミッションは、
①チャンスメーカー
児童養護施設の支援に使われる、月々1000円から可能な寄付プログラム。
金融マンである彼が、施設立て替えや運営の費用のために、
創設したプログラムです。
②キャリアセッション
施設の子ども達が、進路の選択に役立てられるようなセッション。
ロールモデルとなる大人との出会いから学ぶ内容です。
このミッション遂行の特徴は
「パートタイム」ということ。
メンバー全員が本業を持ち、自分たちの空いている時間や持てる知識、技術を使って、
問題解決のために働こうという方針を掲げているのです。
つまり、誰にでも自分の得意を活かせば社会を変えるアクションを起こすことができる、
と著者は言っているのです。
自分から、行動を起こすのが難しくても、
既に活動している団体に加入するとか、
自分なりに勉強し、それを他者に発信するとか、
寄付を行うとか、
なにかしら思えばアクションをすることができます。
まとめ
思えば、自分でもできるアクションがある、
その示唆に心が動いたのだと思います。
あれから年月は経ちましたが、
「児童虐待」という課題は益々重い問題として居残っています。
学校現場でも、家庭環境の格差や困難な状況を、ひしひしと感じることが増えました。
その反面、LIPのような団体の活動は地道に続けられ、
メディアによる認知も少しずつ高まっているのではないかとも思います。
解決の手だては見えないなりに、
「自分にできるアクション」という大きなテーマが
訴えてきたことは具体化していることも感じるのです。
明日は「こどもの日」
こども達の幸せのために、考えたり行動したりする時間をとってみてはいかがでしょう?
読んでくださりありがとうございました。